正源宗之の雑歌詩集

私が詩と出会ったのは今から半世紀以上前二十歳前後だったと記憶している 時を経てまた 思いつくまま気の向くままに 趣味の一つとなりし事 幸いと思う

私は虫となりその世界を見る事に
折も折国道において幅四十センチ高さ二十センチの
土砂崩れが発生 付近を通行中のアリ数匹が生き埋めに
自力で脱出できるのか 
二次災害のおそれあり救出は出来ないとか
土砂崩れの原因は?
その数時間前 カエルが通る際オシッコをして立ち去ったという
目撃証人 いや虫が現れた
カエルのオシッコにより地盤がゆるみ崩れたとの見方もある
道路を管理する国の責任なのか
はたまたカエルなのか
犠牲者であるアリは裁判にもちこんだ 補償を得るため
原告側のアリの弁護士は地質に詳しいミミズが引き受けた
さて 裁判の行方は 
すべての人 いや虫の関心は強く
注視の裁判となる事は間違いなさそうだ
ちなみにその弁護士こそ虫になったわたしである
  ミミズではね 少し気持ちがね
虫も人間社会と変わってはいなかったのである

f:id:saotomekazura:20200204220142j:plain

雑歌は人を繋ぐ~前書きより~

 前書き
私が詩と出会ったのは今から半世紀前二十歳前後だったと記憶している
動機はわからぬが偶然ハイネとゲーテの詩集を読んだ事に始まる
だが今は其の内容も遠い昔のものになり消え去っている わづかに残るのは
ゲーテが剛であればハイネは柔といった様に読み取ったと思うが今は定かではない
それから時は移り会社に勤め出した
仕事にも慣れ二、三年たったころ私は実験室に出入りすることが多くなった
そこには女の子が五、六人働いている
若い女の子と交わるのは楽しいものでもある
中に一人胸ふくよかで機敏な動作の女の子がいた
其の人の名は 日向豊子 ふとその人の名を入れて短歌を作った

   胸を張り日に向かいなば青春の
           君が心の豊かなりけり

そしてその紙片を彼女に渡した 受け取って読む其の子の顔は喜々としていた
「私も作って」次ぎ次ぎと頼まれた だがそんなに簡単に浮かぶものでもない それでも
何人かの子に作ってあげた記憶がある 
数日過ぎたある日 一度家に遊びに来て 最初に作った女の子からの誘いである
会社の帰り其の子の家に立ち寄りお茶をご馳走になった
「お母さん此の方なの私の歌を作って呉れた人」
すでに家族の方に話してあったと思う 私は面目を保ち楽しい一時を過ごした
会社もまた楽しからずや そんな記憶にひたる昨今である

 追記
それから何年かの間に大学ノート一冊位に私の雑歌は続いたが
今は其のノートさえ見当たらない
捨てたのか紛失したのか 長い年月それすらも消え去ったのである
f:id:saotomekazura:20200202163137j:plain