正源宗之の雑歌詩集

私が詩と出会ったのは今から半世紀以上前二十歳前後だったと記憶している 時を経てまた 思いつくまま気の向くままに 趣味の一つとなりし事 幸いと思う

父の死と詩

東京2020オリンピックが決定したその日父は「そこまで生きていられるものか」と口にします。 そしてその言葉は予言となり90歳をわずかに前にして、令和元年初冬に旅立ちました。 三七日の日探し物をしていた私は3冊のファイルを見つけます。 そこにはワ…

叫び

この詩を見つけた時の気持ちを言葉に表現することができません まさしく家の座敷を感じ、奥の間と呼ぶ間の縁側のサッシが開いている 掃除機をかけているのは私だ 父が病院から帰ってくる準備をしている 家には私ひとりだ 父よあなたはいつもの寝間にもう帰っ…

平面と空間

平面に線を描くいつかどこかで交差する其れがどんなに広くともいつかどこかで交差する君は此の平面のどこかにいる君と交差する地点まで其れがどんなに遠くとも君を求めて 君も求めているだろうそれが出会いと言うものかもそれとも君は私を避けて此の広い果て…

私の色は赤なのだれかがそっと私に近づいて来る手を伸ばし赤い私を折ろうとするの私はじっと身構えた手がふれた 其の時私はチクリとさしたそうよ私はアザミなの 私の色は赤なのだれかがそっと私に近づいて来るハサミをもって私を元から切ろうとするの其の時…

戻る

もし 私を呼び止める者がいる ハイどなたでしたか 思い出せない私に対し いつか私を空想の世界にご案内いただきました者で御座います あなたのおっしゃる通りそれは長い旅でした 暗闇の中の一人歩き どこまで行ってもキリがありません ふだらく山の観音様の…

空想

あなたを空想と夢の世界にご案内します 長い間意識のないまま病室に横たわっているあなた 白衣を着た先生がご臨終です 短かな言葉を残し立ち去られました 此の時よりあなたの天国への一人旅が始まります ふだらく山の観音様が多く住まわれる所まで 六文銭は…

眠れぬ夜そっと床を抜け出した 午前二時私は表に立ってみた うすら寒い外気が身にしみる 空には満月には程遠い月明かりがわづかに我が身の影をおとす この時刻君は心地良い寝息と共に夢の中にいる事でしょう 月の中に君の姿を追いながらしばしの時を過ごす …

私は虫となりその世界を見る事に 折も折国道において幅四十センチ高さ二十センチの 土砂崩れが発生 付近を通行中のアリ数匹が生き埋めに 自力で脱出できるのか 二次災害のおそれあり救出は出来ないとか 土砂崩れの原因は? その数時間前 カエルが通る際オシ…

雑歌は人を繋ぐ~前書きより~

前書き 私が詩と出会ったのは今から半世紀前二十歳前後だったと記憶している 動機はわからぬが偶然ハイネとゲーテの詩集を読んだ事に始まる だが今は其の内容も遠い昔のものになり消え去っている わづかに残るのは ゲーテが剛であればハイネは柔といった様に…