正源宗之の雑歌詩集

私が詩と出会ったのは今から半世紀以上前二十歳前後だったと記憶している 時を経てまた 思いつくまま気の向くままに 趣味の一つとなりし事 幸いと思う

眠れぬ夜そっと床を抜け出した
午前二時私は表に立ってみた
うすら寒い外気が身にしみる
空には満月には程遠い月明かりがわづかに我が身の影をおとす
この時刻君は心地良い寝息と共に夢の中にいる事でしょう
月の中に君の姿を追いながらしばしの時を過ごす
その月も雲におおわれ闇の世界に
私の胸も厚い雲におおわれていた


再び床に戻る
冷え切った体はぬくもりの戻るまで
眠れぬ夜はつづく
それでもいつの間にか私を忘れる時が過ぎたのだろう
窓ごしの朝の日差しが私の目覚めを助けてくれた


ベルが鳴った
受話器の向こうに声がひびく
夕べは眠れなかったの 外に出て月を見てたの
そしたらね雲におおわれてまっ暗
君もそうだったの 僕も同じだよ
私の胸の厚い雲はいつのまにか晴れていた

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