正源宗之の雑歌詩集

私が詩と出会ったのは今から半世紀以上前二十歳前後だったと記憶している 時を経てまた 思いつくまま気の向くままに 趣味の一つとなりし事 幸いと思う

叫び

この詩を見つけた時の気持ちを言葉に表現することができません まさしく家の座敷を感じ、奥の間と呼ぶ間の縁側のサッシが開いている 掃除機をかけているのは私だ 父が病院から帰ってくる準備をしている 家には私ひとりだ 父よあなたはいつもの寝間にもう帰っ…

私の色は赤なのだれかがそっと私に近づいて来る手を伸ばし赤い私を折ろうとするの私はじっと身構えた手がふれた 其の時私はチクリとさしたそうよ私はアザミなの 私の色は赤なのだれかがそっと私に近づいて来るハサミをもって私を元から切ろうとするの其の時…

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もし 私を呼び止める者がいる ハイどなたでしたか 思い出せない私に対し いつか私を空想の世界にご案内いただきました者で御座います あなたのおっしゃる通りそれは長い旅でした 暗闇の中の一人歩き どこまで行ってもキリがありません ふだらく山の観音様の…

空想

あなたを空想と夢の世界にご案内します 長い間意識のないまま病室に横たわっているあなた 白衣を着た先生がご臨終です 短かな言葉を残し立ち去られました 此の時よりあなたの天国への一人旅が始まります ふだらく山の観音様が多く住まわれる所まで 六文銭は…

眠れぬ夜そっと床を抜け出した 午前二時私は表に立ってみた うすら寒い外気が身にしみる 空には満月には程遠い月明かりがわづかに我が身の影をおとす この時刻君は心地良い寝息と共に夢の中にいる事でしょう 月の中に君の姿を追いながらしばしの時を過ごす …